頬に冷たい物があたったような気がした。
ふと上を見るとちらちらと白いものが上空を舞っているのが
目に入ってきてげっと顔をしかめる。


「あちゃー、傘持ってくんの忘れたなー。」


家まであと15分ぐらいはかかるだろうか。
ま帰るまでの間に吹雪になるほど降ってくるとは、
思わないが用心するに越したことはない。
こっちの雪は日本のとは比べものにならないぐらいの勢いで降ってくる。
念のため天気予報をチェックしようと携帯を開いてあっと気づく。

―― そうだ、今日は月曜日だ。






今でもひとりになると何度も何度も反芻する感情がある。
自分の中でこんなにも大きい存在のものに
出会ってしまったことに今でも時々動揺する。
前程ではなくなったにしても怖いものは怖いのだ。
いつしか怖いという感情に慣れるときがくるのだろうか。
自分じゃないものに突き動かされる毎日が怖くない、
そう思える日がくるのだろうか。







そういえば俺は1回だけ月子と大喧嘩をしたことがある。
忘れもしない。 その時俺はもやもやしていた上にイライラしていてそんな俺を見て
心配してくれた月子に思わず八つ当たり。



「そんなこと言ったって月子もどうせ俺から離れていくんだから関係ないじゃん!!」



気づいたら吐き出してた余計な感情。
はっと我に返ったときにはもう全て後の祭り。
その瞬間に目に涙をいっぱいためた目で
きっと睨まれて頬を思いっきりひっぱたかれた。



「まだそんなこと思ってたの!?」



って怒鳴った月子は俺がその後何回心から謝っても
泣きやまなかったし、許してくれなかった。
その大喧嘩以来1人について考えることもしなくなっていた。
あれは俺の生涯で最大の失敗だ。









高1の時から今までずっと。月子は俺が楽をすることを決して許してくれなかった。
いつも嫌がる俺を辛い思いをする道へと引きずり出して背中をポンと押す。


「翼くんは1人じゃないよ。私はどこにもいったりしないよ。」

そしてとびっきりにっこり笑って


「いってらっしゃい!」




て言って手を振るんだ。
そんなことされたら いってきます て言って
手を振り返すことしかできないじゃないか。
そんな目でこっちを見られたらもう格好悪い姿なんて
見せられないなって思ってしまうじゃないか。










鞄から鍵を取り出し、家の鍵を開ける。
コートに付いた雪を払い、家の中に入るとしんとした寒い空気が俺を迎え入れた。
暖房を入れて、パソコンの電源をつける、 と同時にポケットの中の携帯がなった。
ほんとどんだけナイスタイミングなんだよ。
そんなどうでもいいようなことがいちいち愛おしい。
いつも通り2コールで電話に出る。


「Hello? もしもし。」


携帯を耳にあて青いベッドに腰掛ける。
電話の向こう側で君は一週間分の何もかもを 吐き出すようにいろいろまくしたてた。
君の言葉に相づちをうちながら 俺は今日は何から話そうかと考える。




「――ん? ちゃんと聞いてるよ。」


「また何か隠してるんじゃないかって?
そんなことあるわけないだろう?
ぬはは、月子は心配性だなあ〜。」



「…大丈夫だよ。本当に本当に大丈夫。」



「知ってるか?
俺は月子が俺のことを思ってくれてるんだって
知ってるからがんばろーって思えるんだぞ。」






「…あのさ。今度日本帰ったときとってもとっても大事な話するから。
だからお願い。待ってて。






−何もしなくていいから、

       待ってて、ください 」









その日はまるで白のペンキが街を塗りつぶそうとしているような雪の日だった。





Alone again,blue bed,clean city.
(再び孤独、青いベット、綺麗な街)