「…かいちょっ!!」
何も考えず生徒会室から飛び出した。もしかしたらもう間に合わないかもしれな
い。だけど少しでも可能性があるのなら先を行った彼を追いかけよう。廊下の先
を目指そう。
「な?言っただろう?」
ふいに後ろから声がした。嘘だ。また怖くなった。後ろが向けない。これは幻だ
。幻であってくれなきゃ私の沽券に関わる。
最後の最後までこの人の掌の上で弄ばれたなんて一生の不覚だ。
「後悔するって言っただろう?現実を見ろ、月子。」
厳しい言葉で私が一生懸命作った殻をガラガラと砕き潰す。
「不知火一樹は星月学園を卒業する。
夜久月子はもう1年ここで過ごす。
別々の道を歩き出すんだよ。」
「 っ…」
何でそう私が恐れることばかりわざわざ言葉に置き換えて伝えてくれるかな。ほ
んと嫌になる。
「でもな、俺達の道は完璧に分かれてる訳じゃないだろう。俺はいつもお前のす
ぐ隣の道を歩いてんだよ。
後ろを振り向くな。前を見て歩け。後ろを見てる暇なんてお前にはないんだよ。
俺はお前に1つ約束しよう。俺はこの先5年でお前がいつ俺のところに来ても恥ず
かしくないようにしておく。だから、」
後ろを向いた。顔はあげれないけど今向かい合わなきゃいけないと感じた。
手持ち無沙汰になった2本の手で会長の制服をぎゅっと掴んだ。お願いだからそれ
以上何も言わないでという言葉を全て手に乗せて。
先を言われても今はこれ以上何もできない。
「かいちょ…そつぎょ、おめで、とう、ございますっ…」
「おぅ、ありがとな。」
会長は待っててくれる。どれだけ私の言葉が止まろうと、なにもかわもがぐちゃ
ぐちゃになって言葉になっていなくても。
だけど今伝えなきゃいつ伝える。赤ちゃんのように拙く脆い1音1音に全身全霊を
込める。
「ずっと、応援してます。わたしもかいちょが浮気しないように、立派なおんな
になりますから。だから、」
落ち着け私。先を急いでどうする。私のために後ろを振り向きながら歩いてくれ
てる人のためにもちゃんと背筋を伸ばして1人で歩かなきゃ。私はあなたが見えて
るから大丈夫です、って伝えないといけない。それから息を整えて。よーいどん!!
全力疾走で追いかけろ!
精々あなたはそこで笑っていればいいの!