11月某日。ぶっちゃけちゃうなら11月3日。文化の日というなんとも素晴らしいそして胡散臭い名前の祝日を謳歌している男女の若者が2人。イン星月学園内の食堂。 2人の前には大量の甘味がずらりと並んでいる。 それらを前に2人はしばらく黙っていたかと思うと、女の方が手をピンと上に伸ばし、高らかに宣言(いや、宣伝と言った方が正しいだろうか)した。

「本日は星月学園弓道部の鬼の部長宮地龍之介氏の誕生日でありまする!」
「む…何だその言い方は…」
「えー、何ってせっかくの誕生日なんだから何か特別なことしようと思ったの!」
「…そうか」
「あ!疑ってる!」
「疑ってなどいない」
「そう?じゃあいいや! でね!誕生日プレゼントです!」
「もう食べていいのか!?」
「まだです!」
「だが、クリームは早いうちがやっぱり旨いんだ」
「もー!宮地君、人の話はちゃんと最後まで聞いて!」
「む…すまん」
「あのね、プレゼント実はこれだけじゃないんだ!」
「まだ追加で出てくるのか?」
「違うよ!本当に宮地君は甘いものの前では盲目的だよね」
「そんなことは…、ない?」
「あるでしょ!」
「…あるな。」
「…。話戻していい?メインの誕生日プレゼント!手出して!宮地君、左手!」
「手?」


そう言って宮地君と呼ばれた彼は素直に左手を差し出した。
彼の素直な反応に満足げな彼女は鞄をがさごそとあさり、目的の物だと思われる茶色い小さな箱を取り出し、箱を開け、中に入っていた細かい模様が入ったアンティークの指輪を彼の指にはめた。

「…お前これ」
「指輪!きれいでしょ?」
「綺麗だけども…」
「これで、私は宮地君の予約を完了しました。」
「い、いきなりどうしたんだ?」
「あのね、宮地君は自分では知らないふりしてるだけで凄い女の子に人気があるの気づいてるでしょ?練習先に行く度に宮地君のファンは増えるばかり。もちろん宮地君の一番のファンは私だし、絶対誰にも負けない自信があるよ?それでも私は嫌だ。宮地君は私のなんだよ?って私が何回心の中で訴えても仕方ないんだ。いくら言ってもみんなには聞こえないもんね。だから」

宮地君は私のなんだよってみんなに見せつけてやるんだ!

そう言って彼女は笑った。
その笑顔はそれまでの彼女の乳臭ささが残る表情からは想像できないような綺麗な女の笑顔だった。
「17歳の誕生日おめでとう宮地君!」



(「でも、指輪は部活中付けれないぞ?」)
(「あ…」)


1.アンティークの指輪