「あ!見て哉太!雪だよ!!」
「はあ?雪なんてここじゃあ珍しくとも何ともないだろ?」
「でも初雪だよ!?」
「…嫌だよな、初雪って。これから寒くなる予兆みたいでさ。」
「寒くなるのは嫌だけどね。でも暖かいところで見る初雪は別じゃない?」
「同感っ!」

朝の天気予報はやっぱり当たる。天気予報士さんは偉大なんだ。
あんまり普段は思わないけどことだからこそ今くらいは感謝しよう。
ちなみに私達が今向かってる場所は当然のことながら蟹座寮である。



「すーずーやー!!」

もちろんアポなし。遠慮も何もあったものじゃない。
部屋の主を大声で呼びドアをバンバンと叩く。待つこと約20秒。


「お待たせ」
「ったく、さっさと開けりゃあいいものを待たせやがって」
「ごめんって。」
「こら、哉太。突然押しかけた私達が悪いんだから。」
「へーへー。邪魔するぜー」
「哉太ー!!」
「大丈夫だよ、月子。入って。」
「ほんとごめんね?お邪魔します」

部屋にはその部屋の主の性格がでる。錫也の部屋は無駄がない。
3人でこたつに入り錫也が入れてくれたお茶を啜る。

「で、今日はどうしたんだ?課題?」
「いや、課題じゃないんだけどね。課題より深刻なことかな…」
「何かあったのか?」
「そうだよ!何かあったの!」
「まあ聞いてやれよ、錫也。笑えるぜー。」
「笑い事じゃないって!私達、明後日実家に帰るじゃない?
一応家に明後日帰るからって電話したの。そしたらうちのお母さん何て言ったと思う?
『あら、帰ってくるの?明日から家にお母さんとお父さんいないわよ。
まあ錫ちゃんと哉ちゃんがいるから大丈夫ね。あんた自分で家事しようと思っちゃだめよ?
っていうんだよ!?ほんっと信じらんない!!」
「それは…」
「な?笑えるだろ?」
「うちのお母さんがどれだけ私のこと信用してないかわかったよ…」
「大丈夫だよ、月子。朝からうちに集まって3食うちで食べたらいいから。」
「お世話になります…。あ、ご飯といえば羊君明日帰ってくるんだよね?」
「あ?そうなのか?俺聞いてねーけど…」
「俺は1週間前くらいに聞いたよ。」
「あいつ…!俺にだけ連絡せずに!!」
「まあまあ…。たぶん羊君恥ずかしかっただけだと思うから。」

なんとなく会話が途切れた。窓の外にはまだ雪が降り続いていた。
2人の顔を交互に覗き見てみるとよくわかる。やっぱり同じこと考えてる。

「―もう1年経つなあ。」
「まだあと2ヶ月あるけどな」
「早いねー」
「そうだ。羊が帰ってきたら4人でどっか行こうか。」
「賛成!!」
「さみーから暖かいところにしようぜー」
「まあ、場所はまた4人で考えたらいいじゃないか。」
「楽しみーっ!!」
「みんなで出かけるの久しぶりだしな!」

今空を舞っている雪が降り続け、次第に積もり、やがて溶ける。
そしたらまた私が出会った春がまた巡って来る。
こんなに春を待ち遠しく思うのはいつぶりだろう。
きっとこの先いつまでも春が待ち遠しく思うことになるのだろう。


出会いがあった。
別れがあった。

私はまだ、此処にいる。

そのことだけが私を安堵へと連れて行ってくれた。







春は花を待つ